読書感想

小説『悪の教典』感想文

読書ブーム到来。
『悪の教典(上)(下)』 貴志祐介 著を読みました。

晨光(しんこう)学院町田高校の英語教師、蓮実聖司はルックスの良さと爽やかな弁舌で、生徒はもちろん、同僚やPTAをも虜にしていた。しかし彼は、邪魔者は躊躇なく排除する共感性欠如の殺人鬼だった。学校という性善説に基づくシステムにサイコパスが紛れこんだとき──。ピカレスクロマンの輝きを秘めた戦慄のサイコホラー傑作。

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感想(ネタばれ注意)


 
共感能力が欠如していて、邪魔者と認定すれば自分の世界から排除する主人公蓮実聖司。
幼稚園のクラスメイト、学校の先生、自分の両親、同僚の教師、生徒。
方法は決して難しいものではないけど、これまでの犯行はバレていない。
目的達成までの難易度に関わらず綿密な計画を立てているからだし、何よりそれに付随する躊躇いや葛藤、感情移入みたいな、大半の人が持つであろう一切の感情が湧かないから。

計画が完璧だと思っていても心が動いてしまって目的が達成できないことって、そういえばある。
むしろ、心が動くから失敗する。緊張、恐怖、同情、過去の苦い思い出、栄光。
小説を読む面白さのひとつは、自分が出来ない事を代わって体験させてくれることだ。
その点で、この蓮実聖司はとても魅力的だった。
人の心を掌握し、駒として扱い、邪魔なものは躊躇なく排除。
学校でのトラブルを解決することと邪魔者を排除することは、問題の重みとして全くの並列で、
迷ったり苦しんだり悩んだりする経験は、目に見えない理想の王国を作るために活きるのみ。
誰かの立場に立ってその人の心中を想う行為は、蓮実にとっては娯楽のように見える。決して同調はし(出来) ない。
意識的・無意識、正しく出来る・出来ないに関わらず、他人に過剰に同調しようとして疲れてしまうタイプの人には、この蓮見にすがすがしさすら感じるんじゃないだろうか。
こんな感情なくなればいいのにと思った事、ありませんか。
わたしはある種の爽快感を感じて、先を読むのが楽しみで仕方なかった。

ミスを犯すまでは。

ミスを犯した時「ああこれ決定打だ。ここから綻んで、捕まるか殺されるかしてしまうんだな」と落胆してしまった。
あとはその結末に向かって物語が進むだけかと。
もちろんその間、蓮実らしい策略、残忍さは見られるけれど、蓮実が冷静に、敵の企みを何度も看破しながら計画を進めて行くほど滑稽になっていった。

すんなり殺すことができなかった、中学の同級生「憂実」と教え子の「美彌」が、蓮見に取ってどんな存在だったかという点はいろんな意見が出る点だろうな。
恋心なんて単純なものではないだろうし、実の母親を何の感慨もなく殺していることを考えると母性を感じてたってのもしっくりこない。

でもそんなことよりわたしは、蓮実聖司が人受けする外見と計算と経験で上塗りされた人たらしっぷりと、決して高度ではない方法で淡々と、わざとらしく人の気持ちに寄り添うことを演じながら計画を遂行する姿を最後までみたかった。
それが担任するクラスの生徒全員を排除するなんて、到底あり得ないと思ってしまう計画だったとしても。
あり得ないからこそ。
リカバーするために急遽立てた計画にしては上手くいった方か。って思いたくなかったな。

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以上、わたし好みのラストではなかったけど、とても面白い小説でした。

映画版の早水圭介と前島は、イメージでは逆なんだけどその辺りどうなってるのか、観てみたい。
ふたり共好きな役者さんだから、しっくりさせてくれるという期待もある。
Huluで是非配信して欲しい。

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